
お茶のティーバッグを振るのはNG!? 科学で解明した「急須並み」の淹れ方のコツ
しかし、科学的な裏付けを持って「淹れ方」を少し工夫するだけで、ティーバッグでも急須並みの美味しさを引き出すことが可能です。
ティーバッグ選びからお湯の温度、そして多くの人がやってしまっているNG習慣まで、最高の一杯を楽しむための秘訣を徹底解説します。

美味しいお茶を飲むためには、買う前の「形」選びから勝負が始まっています。
ティーバッグには主に2つの形状があります。
平面型(座布団型)
古くからある安価なタイプです。しかし、お湯の中で茶葉が重なり合ってしまうため、中心部までお湯が行き渡りにくいという弱点があります。
その結果、抽出にムラが生じ、雑味が出やすくなってしまいます。
テトラ型(三角ピラミッド型)
美味しく飲みたいなら、断然こちらがオススメです。
平面型に比べて内部空間が圧倒的に広いため、お湯の気泡が茶葉に付着して上下に浮き沈みする「ジャンピング」という現象が起こりやすくなります。
これにより茶葉がまんべんなくお湯に触れることで、茶葉が持つ渋み・旨味・香りのポテンシャルを最大限に引き出すことができます。
ティーバッグの形が決まったら、今度はその「材質」に注目します。
ティーバッグの材質には、大きく分けると主なものとして「紙・不織布」、「ナイロン・PET」、「ソイロン(トウモロコシ等の植物デンプンを原料としたポリ乳酸)」の3つがあります。
紙・不織布
最も安価で普及していますが、目が細かすぎてお茶の美味しい成分(微粉末)を通しにくいのが難点です。
さらに、「紙特有の匂い」がお茶に移りやすく、繊細な香りを楽しみたい時には不向きです。
また、水分を吸収しやすく、茶葉が蒸れやすく、2杯目以降の味がグッと落ちてしまいます。
ナイロン・PET
透明なメッシュ状で、お湯の通りが非常に良く、効率よく成分を抽出できます。
しかし、近年ではマイクロプラスチックの放出への懸念から、使用が減少傾向にあります。
<参考文献>
Plastic Teabags Release Billions of Microparticles and Nanoparticles into Tea.
Environmental Science & Technology Vol. 53, No. 21, pp. 12300–12310 (2019)
概要:1杯あたり約116億個のマイクロプラスチックと31億個のナノプラスチックが放出
ソイロン(トウモロコシ等の植物デンプンを原料としたポリ乳酸)
トウモロコシなどを原料とした環境に優しい新素材です。
ナイロン同様にお湯の通りが良く、雑味が出にくいのが最大の特徴です。
また、水切れが良いので茶葉がふやけすぎず、二煎目のために成分を温存しやすいというメリットもあります。
少しコストは高くなりますが、味と健康を考えるなら「ソイロン素材のテトラ型」が最強の選択肢です。
お茶の味を左右する最大の要素は「水」です。
軟水一択
日本の水道水はほとんどが軟水なので、お茶には適しています。
水道水よりミネラルウォーターのほうが美味しいだろうとミネラル分の多い硬水を使ってしまうと、ミネラルが茶葉の表面をコーティングしてしまい、香りが出にくくなります。
さらに、旨味成分のテアニンやカテキンがミネラルと結合してしまい、抽出が妨げられて味が落ちてしまいます。
必ず一度沸騰させる
水道水を使う場合は、必ず一度沸騰させます。
なぜならば、塩素(カルキ)を飛ばさないと、お茶の有機物と反応して不快なカルキ臭が発生してしまうからです。
さらに塩素の強い酸化力によって、お茶に含まれる大切なビタミンCが分解されてしまうからです。
<参考文献>
Effect of water hardness on sensory quality and physicochemical properties of tea infusion.
Food Research International Vol. 41, Issue 3, pp. 325–331 (2008)
概要:なぜ軟水が適しているのか、ミネラル成分とお茶の成分の結合について記載
ティーバッグは「急須」に負けると言われる理由を考えるとき、それでは急須のお茶とティーバッグのお茶の何が違うのかを考えます。
すると、実は「茶葉のサイズ」が違うのです。
急須で淹れるお茶の茶葉
急須で淹れるお茶は、「ホールリーフ」と呼ばれる砕かれていない大きな葉(1cm〜3cm程度)が主流です。
ホールリーフは、まず旨味成分のテアニンから溶け出し、後からじわじわと渋みのカテキンが出てくるため、味に奥行きや立体感が生まれます。
ティーバッグの茶葉
一方、ティーバッグの中身は、短時間で味が出るように細かくカットされています。
茶葉のサイズとしては、ファニングスとダストがあります。
ファニングス(約0.5mm〜1.5mm): 多くのティーバッグに採用されている粒状・破片状の茶葉。
ダスト(0.5mm以下): 粉に近いサイズで、注いだ瞬間に色と味が出る超即効性タイプ。
ティーバッグは茶葉がカットされていて小さく表面積が大きいため、成分が一気に溶け出します。
そのため、テアニンとカテキンの時間差による「味のレイヤー」を作りにくく、構成がフラット(平坦)になりがちになってしまいます。
また、急須で淹れたお茶は「旨味の真髄」が凝縮されている最後の一滴であるゴールデンドロップがしっかりとれるのに対し、ティーバッグで淹れたお茶はその「最後の一滴(ゴールデンドロップ)」を出し切りにくいという構造上の弱点があります。
こうしたところが、ティーバッグで淹れたお茶は、急須で淹れたお茶にはかなわないと言われる所以なのです。
<参考文献>
Kinetics of tea infusion: The effect of the manufacturing process and particle size on the release of caffeine, flavan-3-ols and gallic acid.
Journal of Food Engineering Vol. 104, Issue 2, pp. 229–237 (2011)
概要:茶葉が細かいほど、成分(テアニンやカテキンなど)の抽出が加速することを示唆
ティーバッグの弱点をカバーするには、「成分が溶け出す温度」を正確にコントロールすることが重要になってきます。
お茶に含まれる風味に特に影響を与える「テアニン」、「カフェイン」、「EGC(エピガロカテキン)」、「EGCG(エピガロカテキンガレート)」、「ピラジン」の成分的な特徴を考え、急須で淹れる場合と、ティーバッグで淹れる場合のお奨めのお湯の温度と抽出時間を一覧にまとめてみました。
| 成分 | 特徴 | 特に多く含まれるお茶 | 抽出温度 | 急須での抽出時間 | ティーバッグの抽出時間 |
|---|---|---|---|---|---|
| テアニン | 旨味 | 玉露、抹茶 | 40℃~60℃ | 2分以上 | 1分~1分半 |
| カフェイン | 苦み | 抹茶、玉露、煎茶 | 70℃~100℃ | 1分 | 30~40秒 |
| EGC(エピガロカテキン) | 渋みとまろやかな旨味 | 煎茶、緑茶全般 | 70℃~80℃ | 1分 | 30~40秒 |
| EGCG(エピガロカテキンガレート) | 強い渋み | 抹茶、煎茶、玉露 | 80℃ 以上 | 1〜2分 | 1分 |
| ピラジン | 香ばしい香り | ほうじ茶、玄米茶 | 95℃~100℃ | 30秒 | 10~15秒 |
この成分の性質を元に、それぞれの種類のお茶で、急須とティーバッグでのお奨めの淹れ方をまとめてみました。
| 種類 | カフェイン(苦み) | テアニン(旨味) | EGCG/EGC (渋み) | ピラジン(香ばしさ) | 抽出温度 | 蒸らし時間 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 煎茶 | 普通 | 普通 | 極めて多い | ほぼなし | 70~80℃ | 1分以内 |
| 番茶 | 少ない | 少ない | 普通 | ほぼなし | 95~100℃ | 30~60秒 |
| 玉露 | 非常に多い | 極めて多い | 少ない | ほぼなし | 40~50℃ | 1分~1分半 |
| 玄米茶 | 少ない | 少ない | 少ない | 普通 | 95~100℃ | 30秒 |
| ほうじ茶 | 少ない | 少ない | 少ない | 極めて多い | 95~100℃ | 30秒 |
| 抹茶 | 多い | 多い | 多い | ほぼなし | 70~80℃ | 30~45秒 |
要点・ポイントをまとめると次のようになります。
煎茶・抹茶入り煎茶
ティーバッグは渋みの強いEGCGが出やすいため、お湯の温度は70〜80℃を厳守することが大切です。
熱湯を注ぐと一瞬で渋みだけのお茶になってしまいますので注意が必要で、時間は1分以内にします。
玉露
テアニンの旨味を最大限に活かすため、40〜50℃のかなりぬるめのお湯で淹れることがオススメです。
ほうじ茶・玄米茶
香り成分のピラジンを叩き起こすため、95℃以上の熱湯でサッと30秒で淹れるのがよいでしょう。
どんなに良いティーバッグを選んでも、お湯の温度や抽出時間を厳守しても、最後のアクションで台無しにしている人が結構に多いものです。
茶葉の成分をよく出すために、タグを「シャカシャカ」上下に振っていませんか?
最後の一滴、ゴールデンドロップが欲しいからと、ティーバッグをしぼっていませんか?
実は、これらの行為が、雑味を増やし、お茶の味を悪くしてしまっている原因なのです。
お湯を注いだ後、早く出そうとしてタグを持って激しく振っていませんか?
これは絶対にNGです。
なぜならば、激しく振ることで、茶葉の細胞壁が無理やり破壊され、多糖類やペクチン、さらに微細な破片が過剰に流れ出してしまい、これが、本来出なくていい「エグ味」や「不快な渋味」の原因になるからです。
お湯を注いだら、じっと静かに待つ。これが科学的に最も美味しい待ち方です。
最後の一滴(ゴールデンドロップ)を絞り出そうと、スプーンで押さえたり紐を巻き付けたりして絞るのもNGです。
これもシャカシャカ振るのと同じ理由で、茶葉を傷つけ、雑味を一気に押し出してしまう行為だからです。
タグを引き上げる時は、そっと持ち上げて自然に滴り落ちるのを待つだけにします。
最後にまとめとして、お茶の種類別、急須とティーバッグでの抽出温度と蒸らし時間のお奨めを載せておきます。
| 種類 | 抽出温度 | 急須での蒸らし時間 | ティバッグでの蒸らし時間 |
|---|---|---|---|
| 煎茶 | 70~80℃ | 1分~2分 | 1分以内 |
| 番茶 | 95~100℃ | 30秒 | 30~60秒 |
| 玉露 | 40~50℃ | 2分~2分半 | 1分~1分半 |
| 玄米茶 | 95~100℃ | 30秒 | 30秒 |
| ほうじ茶 | 95~100℃ | 30秒 | 30秒 |
| 抹茶 | 70~80℃ | 30秒 | 30~45秒 |
まとめ動画
<参考文献>
「お茶の科学」(著:村松敬一郎 / 朝倉書店)1991年
テアニン、カテキンなどの旨味・渋味成分の化学的性質 p84–90
抽出温度・時間と溶出成分のバランスについて。 p154–160
水質(硬度やカルキ)が風味に与える影響。p162–165