

夏の暑さも和らぎ、夜にもなると涼しい風が心地よく吹き抜ける秋。
静かな時間を楽しめるこの季節は、「読書の秋」とも呼ばれ、本との相性が抜群の季節です。
日常の喧騒から少し距離を置き、自分の内面と向き合うには、読書ほど適した方法はないかもしれません。
そこで大人の思考を深め、人生に新たな視点を与えてくれる「思考が深まる本」を3冊厳選してご紹介します。
『嫌われる勇気』岸見一郎・古賀史健(ダイヤモンド社)は、種を先に明かしてしまえば、著者の岸見一郎さん、古賀史健さんが、オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラーの思想、いわゆるアドラー心理学を対話形式でわかりやすく紹介・解説しているベストセラーともいえる本です。
全体的に対話形式になっているため、読み進めやすく、それでいて「自分の人生をどう生きるか」という問いが残る深い本と言えます。
哲学者と青年の問答というスタイルを通じて、「人は変われる」「過去は関係ない」「承認を求めるな」など、一見過激にも思えるアドラーの教えが展開されていきます。
特に日本人は、「他人にどう思われるか」が常に気になるという人が多く、「空気を読む」「和を乱さない」ということは一種、日本の美徳とまで言われています。
そんな私たち日本人だからこそ、『嫌われる勇気』は、ちょっと刺激的で思わず手に取りたくなってしまうようなタイトルです。
アドラー心理学の核心である「課題の分離」や「承認欲求からの解放」といった考え方は、私たちが日常で抱える不安や悩みに鋭く切り込みます。「他者にどう見られるか」ではなく、「自分がどう生きたいか」に重きを置く姿勢は、現代人にとって大きなヒントになると思います。
この本の核となるのが、「承認欲求から自由になること」です。
平たくいえば、「他者からどう思われるか」なんかに振り回されず、「自分がどう生きたいか」に正直に生きようというメッセージになるのですが、そこで私たちは考えてしまうのです。
言ってることはわかるけど、「そんなふうに生きられるだろうか?」と。
特に日本社会は、世界でも異様と思われるほど、協調性や集団の和がとても大切にされる社会で、小さいころから、職場でも学校でも、「嫌われないこと」「目立ちすぎないこと」が求められてきたため、「人からどう思われているか」に過敏になる風潮があります。
そのため、多くの人が知らず知らずのうちに「他人の目」を中心に生きてしまっている傾向がありますが、この本は、そんな生き方に警鐘を鳴らす内容になっています。
アドラーは、「他人にどう思われるか」というのは「自分の課題」ではなく、「相手の課題」なのだと語っています。
そして、自分がすべきなのは「自分の課題を見極め、それに集中すること」だとも言っており、つまり、嫌われるかどうかを気にするのではなく、自分の信じる価値観に従って生きることが、本当の意味での自由につながるとしています。
嫌われたいわけではないけれど、「誰からも嫌われないように」生きることは、もともと不可能だし、そんなことをしていれば、結局自分の人生を他人に明け渡してしまうことになってしまいます。
この本がいいたいのは、「嫌われる勇気」つまり他者との距離を適切に保ち、自立した人生を歩むための『覚悟』であり、決して「自己中心的になれ」ということではありません。
自分と他人をきちんと分けるという、成熟した人間関係の築き方になります。
特に日本人は「空気を読む」ことを美徳とし、優先し、自分の本心を押し殺してしまう傾向がありますが、そんな生き方をしていては、いつまでも「誰かの期待に応える自分」から抜け出せなくなってしまう。
この本は、そうした閉塞感を打ち破るヒントが得られるかもしれません。
一見すると児童向けの小説のように思われがちですが、実は西洋哲学の入門書として非常に優れた作品として知られています。
14歳の少女ソフィーのもとに、ある日「あなたはだれ?」という問いの手紙が届き、続いて「世界はどこから来たのか?」などの問いが届き、ソフィーは「謎の哲学講座」を受けることになるという展開で話が進んでいきますが、こうした哲学をテーマにしたミステリー仕立ての物語を通して、ソクラテスから現代哲学までの歴史をたどることができるようになっています。
哲学の本は難しいし、何いってるのかよくわからないし、でも興味はあるという人にオススメの本です。
「世界の見え方が変わった」「問いを持つようになった」と感じるという感想も多いようです。
『ソフィーの世界』は、哲学を物語として体験させながら、問いを持ち、思考することの喜び・苦しさを味わせてくれる一冊で、単に哲学の知識を与えるだけでなく、「疑う」「考える」ことの道筋を読者自身に託す構成になっています。
「あなたはだれ?」、「世界はどこから来たのか?」というような問いには「唯一正しい答え」というものは存在しない可能性が高く、それを問い続けること自体が哲学の営みであり、その過程に意味があるとも言えるのかもしれません。
人との関係、愛や絆に悩みや迷いがある人、日々の忙しさで、何が大切か見失いかけている人、子どもの頃の純粋な視点を忘れてしまったと感じる人などに読んでもらいたいオススメの1冊になります。
『星の王子さま』は、子どもにも大人にも深く響く、詩のような寓話です。サン=テグジュペリが戦火のなかで書き残したこの物語には、「本当に大切なものは目に見えない」という有名な一節をはじめとして、人生の本質に関わる静かで鋭い問いが織り込まれています。
まるで子どもの空想世界を描いた優しい童話のようですが、読み進めていくうちに、そこには愛、孤独、死、大人になること、価値の喪失と再発見などの深いテーマが静かに織り込まれています。
「本当に大切なものは目に見えない」という有名な一節は、物語の中でキツネが王子さまに教える言葉になっています。
表面的には「愛情や絆は目に見えない」と言うことになるのですが、もっと奥深い意味があります。
人生への問いとして、金、地位、容姿、数字、結果といった目に見えるものばかり追っていないでしょうか?
そしてそれは、本当に大切なものなのでしょうか?
これらは、「あなたが大事にしている価値観はどこから来たのか?」ということにつながります。
王子さまの言葉に、「自分のバラは、他のバラと同じに見えても、自分が世話したから特別なんだ」という一節があります。
これは「誰かを大切にするとは、どういうことですか?」という問いにつながっていきます。
つまり、「愛は意味を与えること」でもあるということで、「その人がなぜ大切なのか」「あなたがどう関わったか」が重要で、見た目やスペックではなく、関係性のなかに本当の価値があると示しています。
「数字ばかり気にする大人」が皮肉られたりしますが、子どもの頃にあった感性は、大人になると忘れがち。
大人になっても、目に見えないものを信じられる感性を持てるか? が問われているのかもしれません。